地域医療実習
医学生実習 岡山大学医学部医学科3年生 藤川淳
実習期間 2017/03/13~2017/03/17

私は、今回の実習に参加する前に、患者さん方の普段の生活に密着した医療のあり方を見ようという目標を立てた。ただ、やはり1週間の実習では患者さんの普段の様子まで知ることはできなかった。一見すると元気そうに見える患者さんでも、長く付き合っていると実は大きな苦しみを抱えていることもあるかも知れないと思ったし、一見元気そうでない患者さんでも、その経緯や背景をよく知るとまた違って見えるかもしれないと思った。少なくとも今回の短い時間ではあまり深く知ることはできなかった。
その一方でやはり在宅ならではというか、病院では見られないような医療のあり方も少なからず見ることはできたと思う。特に終末期の患者さんの姿を多く見られたことはとてもいい経験になった。やはり私の知識もまだ足りず、患者さんの様子を見ただけではどのくらい末期的な状況なのかあまりわからなかったが、患者さんや家族の方々がどのような時間のすごし方を選択するのか、それを医者がどのようにサポートするかなどなど、やはり患者さんやご家族の生活の中にあるものなのだと思った。終末期のお爺さんが在宅入浴を受けてとても満足そうな顔をしていたのが非常に印象に残っている。私はこの実習の前は、医者はあくまで専門的な知識や技術を持っていることが重要だと考えていたが、医療の担い手の一人として、医師としての知識や技術を持っていることはもちろん重要だが、人間として患者さんやご家族の方々との関係を作り上げていくという役割も非常に強く求められているのだと感じ、いろいろなことを考えさせられた。
今回の実習では、医師の診察だけでなく、ケアマネージャーさん、薬局さん、訪問看護士さんなどの仕事も見させていただいた。どの職業も地域医療の成立に不可欠で、携わる人々がきちんと連携をとることが非常に重要であることを学んだ。特に、訪問看護士さんについては、少しだけ補助に入らせていただくことができ、仕事の大変さを感じた。その時に、患者さんやご家族の方に対する受け答えで私に至らない点があり、指摘していただいた。終末期の患者さんに対しては非常にデリケートな対応が求められることを実感し、非常に勉強になった。ケアマネージャーさんからは、最初のカンファレンスの時間に、在宅と病院の大きな違いは「老衰」があるかないかだと教えていただいた。「老衰」という、はっきりしないような概念とどのように付き合っていくかということは、在宅医療に携わる者としてはかなり根本的なことに思えたし、仮に在宅医療に関わっていなかったとしても、何らかの形で直面しなければならない問題だろうと思った。薬局の業務を見せていただく実習では、薬の配達と、患者さんのお宅での関係者会議の様子を見せていただいた。様々な職種の方々が一堂に会し、それぞれの視点から多様な意見が出たと思う。地域医療における連携のあり方を実際に見ることができ、非常に貴重な経験となった。
最後に、つばさクリニックの先生方やスタッフの皆さんに感謝申し上げます。今回は、訪問診療に同行するだけでなく、様々な職種を見られるようなスケジュールを組んでくださりましたし、訪問診療においても、いろんな患者さんに接することができるようにしていただきました。そのおかげで非常に濃密な5日間を過ごすことができ、とても勉強になったと感じています。ありがとうございました。
今後地域医療実習に参加される方々におかれましては、在宅医療の姿を見ることは、医師とは何か、医療とは何かと考える非常によい機会になると思います。終末期医療の大きな方針として、病院で最後まで過ごすよりも在宅でターミナルケアを行うという流れがあり、今後在宅医療の担う役割はますます大きくなっていくと思われます。将来的に在宅医療に携わるか否かに関わらず、現場を見ておくことは非常に意義のあることでしょう。実習を通して、在宅医療は様々な職種の方々が協力しあって成立することを学ぶことができましたし、在宅医療は患者さんや家族の方々の生活や人生の一部であることを実感することができました。その中で医師に求められる役割として、もちろん専門的な知識や技術もそうですが、人間としての役割も非常に大きいのだと考えさせられました。患者さんの人生、さらには自分自身の人生において、医療とはどのような存在なのか、簡単に答えの出る問題ではありませんが、現場を見ることによっていろいろと考えることのできた、非常に貴重な機会だったと思います。

ウィンドウを閉じる