研修医 2年目  山内 伸章

私は、2010年1月の一か月間、つばさクリニックで地域医療の研修をさせていただきました。訪問診療では、問診、診察までさせていただきました。その時の感想を述べたいと思います。

現在、私は急性期の患者の多い病院に勤務しています。そこでは、治療を行って、患者の全身状態がある程度回復すれば、あとはかかりつけ医に退院後のフォローをお願いするというのが一般的です。そのため、つばさクリニックで研修をする前までは、患者の退院後の生活を積極的に考えることはほとんどなかつたと思います。今回の研修では、実生活の中での患者さんの姿を垣間見ることができました。その中で患者さんやその家族が生活の中で抱える問題を実際に目の当たりにすることができました。

例えば、脳梗塞による麻痺が残つており、自分の力ではほとんど動くことのできない患者さんの場合、ベットからの移動から、食事、 トイレ動作、入浴に至るまで、家族だけで介護するにはあまりに負担が大きいものだと実感しました。訪問診療に加え、訪問介護など様々な職種の方々が、自宅カンファレンスで知恵を出し合い、協力して患者の生活を支えていることが、初めて目に見える形で理解できました。

これまでの病棟業務の中では、急性期を脱すれば、退院後のフォローは近医に任せればよいという安易な考えが少なからずあつたと思います。このことは、今回の研修を通じて最も反省した点です。退院後の生活で大きな困難を抱える患者に対して、病棟業務に携わる自分に何ができるのかという問いは、常に念頭に置かなければならないと思いました。

この問いに対して自分なりの答えを出す上で、手掛かりとなったのは、やはリクリニックの医師、看護師の患者に対する真摯な姿勢でした。先生たちは、患者の体調の変化に不安を感じた家族からの電話連絡があれば、すぐに駆け付け、必要な処置を迅速にするのはもちろんのこと、患者やその家族が抱く不安を上手に聞き出し、それを一つ一つ解決する手立てを講じていました。中でも印象的だったのは、哄下困難があり完全静脈栄養が必要な患者を自宅介護する家族に対して、ひとりで点滴操作からポンプの扱いができるまで、毎日訪問しレクチャーを行つていたことでした。医療機器に慣れない一般の方が、ひとりで取り扱うのは、非常に不安なことだと思います。そうした不安を一つ一つ丁寧に解決していく様子を見させていただきました。
あるとき中村先生が「訪問診療で大切なことは、患者を取り巻く環境を整えてあげることだ。」とおっしゃっていました。そうした思いは、上記の診療姿勢に如実に表れていたと思います。
そこで先ほどの問いに戻りますが、病院勤務の医師が、退院後の患者の家庭環境の整備に直接協力することは難しいとしても、入院期間中にできるだけ、退院後の生活で抱える不安を患者から聞き出し、それを共有することは可能であると思います。その不安を解消するべくどのような措置を講ずるかという視点はこれからの病院勤務で見失わないようにしていきたいと考えました。

1か月という短い間でしたが、日頃の病棟業務に関して考えさせられる研修でした。このような貴重な機会を提供していただいた、クリニックの先生、スタッフの方々に感謝いたします。

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